異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~
「なんだなんだライ、俺の前で強がる必要などないぞ! 本音ではお前だって、ルイーザ王女にまんざらでもないだろう? 若き日のお前が、ルイーザ王女のスラリとした長身とキュッとくびれたウエストを食い入るように眺めていたのを、俺は知っているぞ? なーに、男なら誰だって、あのキュッとくびれたウエストに、舌舐めずりをしないわけがない! まぁとにかく、俺が万事抜かりなく事前に整えておく! お前は身ひとつで、プローテイン公国に帰ってきてくれればいい! ルイーザ王女も、プローテイン公国民も、もちろん俺だって、お前の帰還を待っている!」
手を伸ばせば届く距離。
声をかければ振り向かせることのできる距離。
ほんの一歩踏み出せば、追いつける距離……。
だけど私は、その距離を埋める勇気が持てなかった。
身を縮め、視線だけは逸らせぬまま見つめていれば、ふたりが段々とその姿を小さくする。
それに伴ってふたりの会話も遠くなり、やがて聞こえなくなった。
長いこと、私は木陰でしゃがんでいた。
青かった空が、西に傾いた陽光でオレンジに色を変え、やがて群青色に変わった。
……帰ろう。
その時間になって私はやっと、重い腰を上げることができた。