異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~
今の俺にとって、プローテイン公国の王位など、すでに塵くずと同じ。
もっと言えば、従姉のルイーザのことなど、俺は碌すっぽ覚えてすらいなかった。しかしよくよく思い出してみると、不必要にコルセットを締め上げて作り上げたくびれを見て、あれでは便通に悪影響を及ぼすのではないかと首をひねったことがあったような気がした。
とにかく、祖国というものを懐かしく思い返すことはあれど、その王の座に今さら俺が就こうなどとは考えもしない。
「俺はすでにテンプーラ王国に帰属し、陛下に忠誠を誓っている。俺は、帰らん。無駄足を踏ませてしまい、済まなかったな」
友は納得していない様子ではあったが、不承不承にうなずいて一応の理解を示す。
「……まったくだ。とんだ無駄足もあったものだ」
十年という月日は、猪突猛進でほかの意見に耳を傾けない友を、幾分柔軟に変えたようだった。
なんとも感慨深い思いだった。
「だがライ、俺はやはり来てよかった。十年ぶりに、お前の顔を見られてよかった」
「あぁ、俺もだ。俺も、十年ぶりにお前に会えてよかった」