バレンタインのおはなし
“ミヤ先輩”
苗字が宮内だから、と上司までもが“ミヤ”と呼ぶから、入社してすぐ私の先輩パートナーになった彼をそう呼ぶのに時間はかからなかった。
ぶっきらぼうで、口が悪くて、なのにどこか面倒見が良い。
ふらっとしている様に見えて、意外と頭が切れる。
基本的に仕事の教え方はおおざっぱだけど、ポイントは逃さない。
同じことを何度聞いても根気よく教えてくれるけど、注意されたことを3度繰り返すと、時々ガツンと雷が落ちる。
そのかわり、きちんと出来たところは、愛犬をわしゃわしゃするみたいに褒めてくれる。
何が言いたいかというと。
私がミヤ先輩を好きになるのは、時間の問題だったということ。
「そもそもなんで私のチョコだけ断るんですか」
「不貞腐れんなよ」
「不貞腐れますよ!別に付き合って、って言ってるわけじゃないのに!」
「あ、もしかしてこれ義理チョコ?」
「そんなわけないじゃないですか、ド本命ですよ!」
「なんかめんどくせーなお前」