福山先輩、あのね。
「おい、そこ! さっきからうるさいぞ!」
藤井先生の声が飛んできて、陽子たちは「やばっ」という表情で口をつぐんだ。
「自分たちの順番がくるまで、ちゃんと準備運動してろ!」
「はーい」
心のこもっていない返事をして、陽子と木下が適当な準備運動を始める。わたしもその横で、同じように屈伸をした。
「ほんっとうるさいよね、藤井のやつ。準備体操なんかしても意味ないのにさあ。どうせテニス部の子たちに負けるんだから。ねー、沙和」
小声でグチって同意を求めてくる陽子に、わたしは「あ、うん」と短く返事をした。いつもより反応の薄いわたしに、陽子が不思議そうな顔をする。
「沙和、どうかした?」
「あっ。ううん。お腹すいたなーって思ってただけ」
「わたしもー。早く体育終わってほしいなー」