福山先輩、あのね。
いつのまにか陽子と木下が、新しくできたカフェの話題で盛り上がり、わたしはその横でひとり黙々と準備運動を続けた。
『もっと楽しいこと、いっぱいあんのにさあ』
さっきの陽子の言葉を思い出す。
……楽しいよ、たしかに。みんなといる時間は気楽で、たしかに楽しいんだけど。
わたしは、心から笑っているのかな。
胸の奥に引っかかるこの感じは、何なんだろう。
「ねー沙和も放課後、一緒に行こうよ」
いつもの調子で誘ってきた陽子に
「……ううん、今日はやめとく」
わたしは静かに首を振った。