福山先輩、あのね。

このまま……何もできずに終わってしまうのかな。

別に付き合いたいとか高望みしているわけじゃない。だけど、もっと先輩を見ていたい。前を向いて走る先輩の背中を、ずっと見つめていたい。

そしてほんの少しでも、先輩にわたしのことを知ってもらえたら――。



あれこれと考えながら川沿いの道を歩いていると、前方から足音が近づいてきた。一定のリズムで地面を蹴って走る音。なんとなくその方向を見たわたしの目に、人影が写る。

暗闇に紛れてぼんやりとしか見えなかった、その人の姿に、街灯の光が射したとき……

わたしは気づいた。


福山先輩が、ひとりで夜道を走っていたんだ。

< 26 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop