福山先輩、あのね。
このまま……何もできずに終わってしまうのかな。
別に付き合いたいとか高望みしているわけじゃない。だけど、もっと先輩を見ていたい。前を向いて走る先輩の背中を、ずっと見つめていたい。
そしてほんの少しでも、先輩にわたしのことを知ってもらえたら――。
あれこれと考えながら川沿いの道を歩いていると、前方から足音が近づいてきた。一定のリズムで地面を蹴って走る音。なんとなくその方向を見たわたしの目に、人影が写る。
暗闇に紛れてぼんやりとしか見えなかった、その人の姿に、街灯の光が射したとき……
わたしは気づいた。
福山先輩が、ひとりで夜道を走っていたんだ。