福山先輩、あのね。
自分の目を一瞬、疑った。先輩のことを考えすぎて、幻覚が現れたのかと。
だけどそこにいるのは、紛れもなく本物の福山先輩で。私服のジャージを着て、白いタオルを肩にかけて走っている。
きっと駅伝のために自主トレしているんだ。でもまさかこんな所で会うなんて、心の準備が全然できてないよ。
そんなわたしの動揺なんか知る由もなく、先輩は額の汗をタオルでぬぐいながら、一心に前を見て走っている。