福山先輩、あのね。
「あの人ってさあ、いつ見てもさわやか100%だよね」
放課後の教室。いつものように他愛ないおしゃべりをしていたら、友達の陽子が窓からグラウンドを見下ろして、そう言った。
「え、どの人?」
「あの人だよ、ほら、生徒会長の。えーっと名前なんだっけ……」
「福山修二先輩でしょ」
わたしが頭の中でつぶやいたのとピッタリ同時に、他の友達が答えた。そのとたん、心臓がキュッとなる。
会話の中に先輩の名前が出ると、なぜかいつもそうなんだ。きっとわたしの心臓には見えないスイッチがあって、「ふくやましゅうじ」という言葉でスイッチオンになるんだと思う。
わたしは胸の高鳴りを隠しながら、何食わぬ顔でグラウンドに目をやった。