福山先輩、あのね。

「あ…あははっ……」


こみ上げてきたのは、なぜか笑い声だった。人間、パニックを通り越すと笑ってしまうのかもしれない。

急にひざが震えてきて、ガードレールに両手をつく。そんなわたしを不思議そうに見上げる犬のモモ。


「……モモ~。あんたが散歩に誘ってくれたおかげで、こんな奇跡が起きたんだよ。ありがとうね」


しゃがみこんで、モモを抱きしめる。動物の高い体温がわたしに伝わり、そしてそれ以上に熱い気持ちが、胸いっぱいに広がっていた。

ほんとに奇跡だ。モモにも、神様にも、ありがとうって気持ちがあふれてくる。


そのとき、ふと、何か白いものが道路に落ちているのに気づいた。
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