福山先輩、あのね。
3.どうして?
その日は家に帰ってからも、ドキドキして、すぐには寝つくことができなかった。
翌朝もやたら早く目が覚めて、だけど寝不足感はなく、エネルギーが体に満ちているような不思議な感じがした。
「あら、めずらしく早起きね」
いつもより30分早く用意をすませてリビングに行くと、お母さんが朝ごはんの準備をしながら、わたしを見て目を丸くした。
「うん、まあ、なんか起きちゃって」
「時間があまってるなら手伝ってちょうだい」
「うん」
素直にうなずいたわたしに、お母さんがさらに大きく目を見開く。
「どうしたの。いつもならお手伝い嫌がるくせに」
「別に。どうもしてないよ」
ぶっきらぼうに答えながらも、わたしは久しぶりにお母さんの手伝いをした。初めて作った目玉焼きは少し固かったけれど、自分で作ったと思うと妙においしく感じた。