福山先輩、あのね。

「おっ、めずらしく沙和がマジメに書いてんじゃん」


ペンを走らせ始めたわたしに、ななめ前の席の木下が言った。わたしはとっさに原稿用紙を手で隠し、何食わぬ表情を作る。


「ああ、うん。さっさとすませた方が楽だから」

「たしかになー」


適当にすませよーぜ、と笑う木下に、あいまいに相槌を打つと、わたしは再び机に向き直った。


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