福山先輩、あのね。
校長先生の長話はうざくても、全校集会は嬉しいんだ。だって、福山先輩の姿を見ることができるから。
3年生の列に並び、シャキッと背筋を伸ばして前を向いている先輩。あんなにつまんない校長先生の話も、先輩だけはちゃんと真剣に聞いてあげるの。
まわりの人たちは堂々とあくびしてるのに、必死でガマンして。あくびをかみ殺してちょっと涙目になっているのが、なんだか可愛い。
「沙和ー、どこ見てんの?」
「へっ? 別に」
「あやしいな~」
「何もないってば。木下のバカ面を見てただけだよ」
陽子のツッコミに反論して、わたしは男子の列の木下を指さす。その気配に気づいたのか、木下がこちらを向いてヘラヘラと手をふった。
「ほら、やっぱあいつバカだ」
「あはは」