福山先輩、あのね。
エコーのきいた声で藤井先生が読み上げていく、つたない作文。
その内容に、わたしは覚えがあった。
「私は勉強が嫌いです。運動も嫌いです。しんどいこと全部が嫌いです。
そして、嫌いなことを頑張るのは、もっともっと嫌いです。
だけど、「嫌いだからこそ挑戦する」という考え方の人もいるのだと、最近知りました。
その人が頑張っている姿を見たとき、私は感動してしまいました。
その人は長距離走が苦手なのに、自分から校内駅伝の選手に立候補しました。
そして、誰も見ていない夜の道で、ひとりトレーニングをしていました。
私はそんな風に、何かに努力をしたという経験がありません。
努力して実らなかったらどうしよう、と考えると怖いからです。
だけどその人の頑張る姿を見て、私もあんな風になりたいと思いました……」