福山先輩、あのね。
3年生の列が、しだいにザワザワしてくる。
「おい、これって福山のこと書いてんじゃねーの?」
誰かが大声で冷やかすように言い、視線が福山先輩に集中した。
「だよな、絶対福山じゃん!」
「書いたのって女子だろ?」
「モテるなー、福山!」
みんなに冷やかされた先輩は、「静かにしろよ」とマジメな声で言い放ち、いつものようにシャキッと前を向く。
だけどその表情は、明らかに強張っていた。
壇上の藤井先生は、騒がしい3年男子たちに「私語はつつしみなさい」と注意をすると、さらに作文の続きを読んでいった。