福山先輩、あのね。
そのとき、誰かの足音が近づいてくるのが聞こえた。わたしはあわてて下駄箱から離れる。そして昇降口を小走りで出ようとしたとき。
グラウンドの方から入ってきた生徒と衝突しそうになり、足を止めた。
「……あっ……」
思わず小さな声がもれた。
福山先輩だった。
1メートルも離れていない距離で対峙し、視線を合わせたまま同時に息をのむわたしたち。
夕焼け色を映した先輩のきれいな瞳が、とまどいで揺れていた。