福山先輩、あのね。
「……あ……あの……」
数秒間の沈黙をやぶったのは、震えるわたしの声だった。けれどその先の言葉が見つからず、口をぱくぱくさせて浅い呼吸をくり返す。
先輩……すごく気まずそうな顔してる。
当たり前だ。わたしが先輩を好きだってこと、あんな形で全校生徒にバレちゃったんだから。
もしわたしが先輩の立場なら、こんな風にばったり会ってしまうのは、気まずい以外の何物でもない……。
「あ、福山、もう戻ってきたのか?」
ふいに男子の声がして、わたしたちは絡み合っていた視線をサッと解いた。