福山先輩、あのね。
駅伝がスタートするまで、あと30分くらい。グラウンドには選手たちが集まり、準備運動をしていた。
みんな緊張した面持ちで、だけど胸に縫いつけたゼッケンが誇らしげ。
そんな中、白い息をはきながら屈伸運動をする福山先輩の姿があった。
真剣な表情がまぶしくて、わたしは目をそらす。
「ねえ沙和、どのあたりで応援するー?」
「んー。コンビニの近くがいいよね」
「同感ー」
わたしは平静を装い、陽子とおしゃべりしながら先輩の横を通り過ぎた。