福山先輩、あのね。
「あ、そういやさ。
福山先輩、選手の中にいた?」
「……え? うん」
「そっか」
木下の顔が曇る。そのただならぬ様子に、わたしは眉をひそめた。
「なんで、そんなこと聞くの?」
「いや、実はさ……今日の朝、先輩んちのおばさんが言ってたんだ。
先輩……右足をネンザしてるらしいんだよ」
「えっ……」
反射的に頭に浮かんだのは、昨日、違和感を覚えた先輩の歩き方。
そうだ、あのときたしかに、いつもの先輩とはどこか様子が違った。あれはケガをしていたからだったんだ。
なのにわたしは、3年生にからかわれたことで頭がいっぱいで、先輩の異変にきちんと気づけなくて……。