福山先輩、あのね。
先輩の必死の訴えを、藤井先生は苦い表情で突っぱねて言い放つ。
「ダメだ。今すぐ保健室に行ってこい」
藤井先生の判断は、誰が見ても当然のことだった。
今の状況で駅伝なんか出たら、ケガが悪化するだけ。
そしたら痛いし、苦しいし、あとで後悔するかもしれない。
やるだけムダなことかもなのしれない。
だけど―――…
「先生、待って!」
突然割りこんだわたしの声に、みんながこっちを向いた。
福山先輩も、わたしを見て目を大きく見開いている。
わたし、何をしてるんだろう、とか。
こんなことしたら、またからかわれてしまう、とか。
そんな冷静な考えは、このときのわたしの頭には浮かばなかった。