福山先輩、あのね。
「先輩のこと、走らせてあげてくださいっ。この日のために、ずっとがんばってきたんだから。ここであきらめて後悔してほしくないんです。
わたしも、先輩に走ってほしいんです……」
わたしの声はしだいに涙声になっていく。
唖然とした顔でこちらを見る選手たち。
厳しい表情の藤井先生。
そして、うつむいて表情が見えない福山先輩。
関係ないくせにいきなり現れて、こんなこと言うなんて、みんなビックリしているだろう。ようやく自覚が湧いてきたけれど、後悔はなかった。
だって、先輩の走ってる姿が見たい。
それがわたしの願いだから。
藤井先生はしばらく難しい顔で黙っていたけれど、ため息をひとつ吐いて、首を横に振った。
「おい保健委員。福山を保健室に連れていってくれ」