福山先輩、あのね。
……願いは、聞き入れてもらえなかった。うなだれた福山先輩が、保健委員に肩を貸してもらいながら去っていく。
その寂しい後ろ姿を見つめながら、わたしは立ち尽くしていた。
「沙和」
いつの間にか追いかけてきたらしい木下が、わたしの肩に手を置いた。
「戻るぞ」
「……うん」
木下に連れられて、グラウンドをあとにする。
木下は何も言わなかった。いつもの彼なら「何バカなことやってんだよ」って悪態つくくせに、今日は何ひとつ言おうとしなかった。
……あきれすぎて、言葉もないのかな。みんな絶対、引いたよね。
きっと福山先輩だって、「何こいつ」って思ったはず。