福山先輩、あのね。
だけどね、先輩。
秋の夜に、偶然見かけた先輩の姿。
ひとりでトレーニングしていたあの日の先輩を、どうしてもわたしは忘れることができなかったんだ。
「あー、沙和。どこ行ってたの? 急に走っていなくなるんだもん」
コンビニの近くまで戻ってくると、陽子がぶんぶんと手招きをしていた。
「……ごめん。ちょっと教室に忘れ物しちゃって」
わたしは作り笑いでごまかして、木下と一緒に陽子のそばに座った。
沿道には生徒以外にも、近所の人たちが集まりにぎわっている。だけどわたしは周囲の盛り上がりムードをよそに、ぼんやりと道路をながめていた。