福山先輩、あのね。
……福山先輩。今頃、どんな気持ちでいるんだろう。今まであんなに努力してきたのに、本番直前であきらめることになるなんて……。
灰色のアスファルトの上に、ちらちらと白い粉雪が落ちてくる。いつのまにか降り始めた雪を、わたしは言葉もなく見つめていた。
しばらくすると、わっと周囲から歓声が上がった。
まっすぐ伸びた道路の先に、トップを走る選手の姿が見える。2年生の男子だ。
「がんばってー!」
声援が大きくなる。目を凝らすと、後続の選手たちが次々に走ってくるのが見えた。
そのときだった。
「沙和! あれ見ろ!」
木下が遠くを指さして叫んだ。