福山先輩、あのね。
雪の舞う道路。たくさんの応援の人たちに囲まれた、その道の先に。
「―――……先輩…」
彼の姿が、たしかにあった。
白いゼッケンを胸につけ、赤いたすきを肩にかけて、堂々とした表情で先輩は走っている。ケガした足で懸命に地面を蹴り、前へ前へと。
その姿があまりにもまぶしくて。
気づけば両目から涙があふれていた。
「福山先輩……出場できたんだな」
木下が噛みしめるようにつぶやいて、泣いているわたしの頭に片手をぽんと乗せた。
「きっと、お前のおかげだ」