マリンスノー
私はうみくんの特別だと思う。
きっとうみくんに私が特別かどうかたずねても同じ返答が来ると確信している。
でもそれは、私の望む特別じゃない。

うみくんは、私を“特別な家族”として認識している。

家族って言葉、大嫌い。
だって私は、うみくんを家族だなんて思ったことないんだから。

考えれば考えるほど、涙が止まらなくなる。
うみくんへの想いのぶんだけ涙があふれだす。

だからだろう。
近づいてくる足音に気づけなかったのは。

「わっ!」

相手の驚く声に驚いた私は。
涙でぐしゃぐしゃになった不細工な顔をぱっとあげてしまった。

冬の冷たい空気の中。
ハウスダストがキラキラと目に見えて舞っては落ちていく。

スローモーションに見える視界の中。
現れたのは、誰もが知っている人だった。

「……冬野くん?」

冬野くんは、そのまま帰ることもなく。
私の元まで階段を上がって、その横に腰を下ろした。

予想できない行動に、私は咄嗟にひと一人分の間をあけてしまった。

「隣いい?」

もう隣にいるのに聞いてくる冬野くんに。
断る理由もないので縦に首を振る。
その様子に微笑んだ冬野くんは、前を向いた。

どうして冬野くんがここにいるんだろう。

冬野くんは、学年1かっこいいと言われている男の子で。
まさに雪加瀬さんの男の子バージョンみたいな人だ。

いくら私がうみくんのことを好きだからといって。
こんなにもかっこいい人が隣にいたら、ドキドキしてしまう。

ちらり、横目で冬野くんを盗み見すると。

ドアのガラス部分から差し込む柔らかな太陽の光が髪を照らして。
銀糸のようにキラキラと輝いていた。

きれいなEラインの横顔。
少し切れ長な目、だけど子供っぽさも残したあどけない顔立ち。
かっこいいって言われるのも納得だった。
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