マリンスノー
「で、堀川さんはどうしてここで泣いてるの?」

聞かれると思っていたことを改めて聞かれると、体がこわばってしまう。
そりゃ、聞くよね。
授業さぼってこんなところで大泣きしてるんだから。

「話したくないことだったら言わなくてもいいんだけど。
 気になっちゃったから。」

そう言う冬野くんに、私も気になることを尋ねる。

「どうして冬野くんは、ここにいるんですか?」

質問で返されると思っていなかったんだろう。
少し驚いてから、冬野くんはバツが悪そうにもごもごとつぶやいた。

「その……よくサボるんだよ、ここで。」

「えっ。」

「体調悪いって嘘ついて、ここでよくサボってんの。」

……ほんとう、冬野くんで想像してた冬野くんと全然違うんだ。

「あ、ちゃんと出席日数考えてサボってるからな?」

どや顔でそういう冬野くんに思わず笑ってしまう。

「悪知恵……。」

「なっ!?」

「あはは!」

笑われたことに不服そうな顔をする冬野くん。
その姿を見て、私はまた笑ってしまった。

「いいんじゃないかな。」

「えっ?」

「授業を受けたくないときは、サボってもいいと思う。」

そう答えると。
冬野くんは、少し驚いた後くしゃっと笑みを浮かべた。

「そんなこと言われたの初めてだ。」

キラキラしている人だと思った。
この人が笑うだけで、空気が華やかになる。
人が知らぬ間によって来る人。そういう才能のある人。
一緒にいるだけでわかる。
彼は、中心にいるべき人物だ。

「私、失恋したんです。」

どうしてだろう。
いうつもりはなかったのに。
彼の前にいると、本音があふれてしまった。

「ずっと好きな人がいるんです。
 でも、その人に彼女ができて……。
 告白することもなく、振られてしまったんです。」

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