マリンスノー
勝手に好きになって。
勝手に失恋して。
勝手に泣いている。

考えてみれば、全部自分勝手だった。

そう思うと、今度は涙じゃなくて。
笑いがこみ上げてきた。

「バカだよね。相手は何も悪くないのに。
 どうしてって、責めてばかりいるなんて……」

「確かに、相手は悪くないね。」

慰める言葉はなくて。
現実を突きつける言葉にまた一つ、心が悲鳴を上げる。

「でも、堀川さんも悪くないよね。」

「えっ。」

「誰かを好きになることは悪いことじゃない。
 でも、好きになってもらえなかったのは。
 ただ、運やタイミングが悪かっただけじゃないかな。」

「運とタイミングが悪かっただけ……」

「うん。だから、堀川さんは悪くない。」
悪くない。
その一言が、ボロボロの心を優しく包み込む。

「だから、泣いていいんだよ。
 俺がここにいるせいで泣けなくなったなら別の所に行くし。
 でも、部外者の俺でも話を聞くことくらいはできるよ。」

そう優しく言ってくれる彼の優しさに。
私は止まっていた涙が再びあふれ出した。

「小さい頃からうみくんだけだったの……。
 ずっと傍にいて、ずっとうみくんだけを見てきた。
 他の誰かじゃダメなくらい、それくらいうみくんが好きなの……。」

好きなんて言葉じゃ表しきれない。
私にとって、うみくんは人生そのもの。
私の全てなんだ。

それくらい。それくらい……。

「頑張ったんだね。」

「……っ!」

「よく頑張ったね。」

遠慮がちに、でもしっかりと。
冬野くんが私の頭を撫でている。

その少し不器用で、でも優しい手つきに。
私はまた涙が溢れた。

ずっとその言葉を言ってもらいたかったのかもしれない。
小さい頃から、この想いをせき止めることだけ。
隠すことだけを考えてきた。

告白しようなんて考えたこともなかった。

最初から叶わない恋だって分かってたから。
だからずっとずっと。

「誰かに、そう言ってもらいたかったの。」

「わっ、なんでもっと泣くの!」

「うわあああああああん!」

大声で泣きじゃくる私にオロオロとする冬野くん。
泣きやめさせる方法が分からなくて戸惑う冬野くんは。
遠慮がちにハンカチを私に差し出した。

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