マリンスノー
「水菜?」

うみくんも驚いてるって事は、約束してたわけじゃなさそう。
雪加瀬さんの方を見ると、鼻を赤くさせながらこちらへ寄ってくる。

「びっくりした?」

「うん、びっくりした。」

「あはは~じゃあ大成功だ~!」

そう言って笑う雪加瀬さんはやっぱり。
……やっぱりかわいかった。

「堀川さんもおはよう!」

「おはよう、雪加瀬さん。」

「私も一回うみと登校してみたいなあって思ってて。
 それで思わず、待ち伏せしちゃった。」

えへへと、口に手を当てながら微笑む姿は女の子の私ですらときめくくらいで。
ちらりと横目でうみくんをみると。
やっぱりかわいいって思ってるんだろうな。
マフラーで顔を埋めて赤くなっているのを隠してる。

「あ、やっぱり待ち伏せって気持ち悪かったかな?」

照れた姿から一変して顔を青ざめている。
表情がコロコロ変わるところも見てて全然飽きない。

「うみくん喜んでるみたいだから大丈夫ですよ。」

「えっ。」

「……凪。」

「表情じゃ気づかないけど。
 うみくんは照れてるとき口元を隠す癖があるんです。」

「凪!」

「照れて恥ずかしいからって大声出さないでよね。」

「やっぱり堀川さんは、うみのこと何でも知ってるんですね。」

少し羨ましそうに。
でも、嫌みを感じさせない言い方で雪加瀬さんはそう言った。

「あの!堀川さん。」

「はい?」

「せっかく待ち伏せ成功したので……そのうみとふたりで登校してもいいですか?」

……ずきりと胸が痛む。

「水菜、朝の登校はいつも凪としてるから3人でもいい?」

「……そうだよね。えへへ」

寂しそうに笑う雪加瀬さんを見ていると、いてもたってもいられなくて。


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