マリンスノー
「凪、今日は僕の家でご飯だったよね?」

「うん、そうだよ。」

「凪の好きないちご、デザートに用意してあるって母さんが言ってた。」

「ほんと!嬉しい……!」

「僕のもわけてあげるよ。」

「いいよ!うみくんが食べて。」

「僕が凪にあげたいんだ。」

「……ありがとう、うみくん。」

この関係を、私の好きで崩しちゃうのは嫌だから。
告白して、うみくんの隣にいられなくなっちゃうくらいなら。
一生幼なじみとして隣にいるほうが、私は幸せだから。

学校に着いてから、下駄箱で靴を履き替えて教室へ向かう。
高校2年目もうみくんとは同じクラスで、席は離れちゃったけど同じ空間で勉強ができるだけで幸せ。
そんな些細なことが、今の私にとっては大きな幸せなんだ。

「おはよ、橘花ちゃん。」

「おはよ、凪。」

私の隣の席は仲良しの橘花ちゃん。
私がうみくんのことが好きなことを唯一知っている人。
名前みたく花のように笑う顔が素敵な、私の大好きな女の子。

「相変わらず仲いいね、ふたりとも。」

「一緒に登校してるだけだよ?」

「登下校一緒な幼なじみとか聞いたことない。」

「家がお隣同士なんだもん……」

「男女でそこまで仲いいのは珍しいでしょ。」

「ふたりとも帰宅部で帰る時間一緒なのに別々に帰る方がおかしい気がするんだよねえ。」

「そういうものかねえ。」

「そういうものだよ~。」

「一緒に帰りたいだけじゃなくて~?」

「橘花ちゃん!」

「あはははっ!凪かわいい。」

「からかわないでよ~!」

目を細めてくしゃりと笑う姿はやっぱりかわいくって。
からかわれてちょっとむっとしちゃったけど。
そんな姿を見たらどうでもよくなっちゃった。
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