マリンスノー
*
「ねえ、水原。」
「……梓紗?」
「話、あるんだけど。」
凪が先生に用事を頼まれていない昼休み。
私はひとりで食事をとる水原に声をかけた。
私たちは人気の少ない体育館裏まで移動した。
「体育館裏に連れ込まれるなんて、いい想像はできないんだけど。」
「水原にしてはずいぶんと勘が鋭いんだね。」
「何か要件でも?」
「凪のことで話が。」
「……。」
どうして、水原がそんなに傷ついた顔をするの?
凪の名前を出しただけで。
どうしてそんなに。
まるで、失恋したみたいに苦しそうな顔をするの?
「最近、凪と話してないみたいだけど。」
「それは……。理由があるんだ。」
「理由って?」
「……。」
黙り込む水原にイライラが募る。
こいつのはっきりしないところ、本当嫌い。
「凪の、頼みだから。」
「え?」
「凪が、望んだんだ。」
……凪が望んだ?
どういうこと。
「昔みたいなのが嫌だって。……僕を家族だと思ったことがないんだ、凪は。」
水原がそんな顔をする理由が分かった。
ふたりがおかしくなってから。
凪が水原の方を見ることはなくなった。
頑なに無視して、見ないように徹底して。
無理してるのが伝わってきた。
でも水原は逆だった。
ちらちらと凪の方を見たり、顔色をうかがったり。
気になって仕方ない、そんな感じで……。
でも、そういうことなのか。
ぎゅっと握った手に力を入れる。
皮膚に食い込んだ爪が痛くても私は握りしめるのをやめなかった。
「ねえ、水原。」
「……梓紗?」
「話、あるんだけど。」
凪が先生に用事を頼まれていない昼休み。
私はひとりで食事をとる水原に声をかけた。
私たちは人気の少ない体育館裏まで移動した。
「体育館裏に連れ込まれるなんて、いい想像はできないんだけど。」
「水原にしてはずいぶんと勘が鋭いんだね。」
「何か要件でも?」
「凪のことで話が。」
「……。」
どうして、水原がそんなに傷ついた顔をするの?
凪の名前を出しただけで。
どうしてそんなに。
まるで、失恋したみたいに苦しそうな顔をするの?
「最近、凪と話してないみたいだけど。」
「それは……。理由があるんだ。」
「理由って?」
「……。」
黙り込む水原にイライラが募る。
こいつのはっきりしないところ、本当嫌い。
「凪の、頼みだから。」
「え?」
「凪が、望んだんだ。」
……凪が望んだ?
どういうこと。
「昔みたいなのが嫌だって。……僕を家族だと思ったことがないんだ、凪は。」
水原がそんな顔をする理由が分かった。
ふたりがおかしくなってから。
凪が水原の方を見ることはなくなった。
頑なに無視して、見ないように徹底して。
無理してるのが伝わってきた。
でも水原は逆だった。
ちらちらと凪の方を見たり、顔色をうかがったり。
気になって仕方ない、そんな感じで……。
でも、そういうことなのか。
ぎゅっと握った手に力を入れる。
皮膚に食い込んだ爪が痛くても私は握りしめるのをやめなかった。