マリンスノー
「……凪。」

「霞くん、行こっか。」

私の名前を呼ぶうみくんを無視して。
私は霞くんの手を引いた。


しばらく、お互い無言で歩き続ける。
行こう、って歩き始めたのはいいものの。
完全に止まるタイミングを見失った……。

どうしよう……。

うーんっと悩んでいると。
いきなり腕が後ろに引っ張られて身体が傾く。

えっ……?

倒れる!!
そう思って、ぎゅっと目を瞑ると。
ぽすんっと音がした。

目を開ければ、後ろには霞くんがいて。
私は霞くんにもたれかかるように倒れていた。

「ご、ごめん霞くん!」

「いや、俺がいきなり立ち止まったのが悪いから。」

手を繋いだまま霞くんが立ち止まったから後ろに引っ張られたらしい。
後ろに引っ張られた理由を理解した私は。
体制を元に戻して、霞くんの隣へ移動した。

「どうしたの?」

そう尋ねながら霞くんの顔を覗くと。
手を繋いだまま、霞くんは左手で私のことを引き寄せて。
そして、力強く抱きしめた。

「か、霞くん!?」

いくら人がいないからってここは通学路で。
いつどこから人が来るか分からない状態で。
それで、で……だから……その……は、恥ずかしい……。

「ごめん……少しだけ。」

掠れた声でそう呟く霞くんは、いつもの霞くんと少し違って。
私は持て余した右手をそっと霞くんの背中に回した。

「まさか凪がああ言ってくれるとは思ってなかった。」

「え?」

「抱きしめてくれたり、俺とのことを大切にしたいって言ってくれたり。」

「ああ……さっきの。」

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