私の知らない「ワタシノココロ」
「まだ覚えてて…ってまあ、そんなすぐ忘れるわけないよね。」
無表情を意識して言う。感情を爆発させるとろくなことにならないということは、もう経験済み。同じ間違いは、起こすわけにはいかない。
「そりゃあね。意図して覚えてたわけじゃないし。そんなに俺も性格悪いわけじゃないからね。」
淡河の言葉に私は首をかしげる。
「性格悪いって…そんなの聞いたことないけど…?」
人と話さなくなってから、話に聞き耳をたてることが多くなった。そのため、いろんな情報を得ることができる。そんななか淡河に関しては、「いい人」、という評価以外聞いたことがない。
「騙されてるよ、みんな。俺はそんないいやつじゃない。…例えばいいやつだったら、授業中隣で寝てるやつがいたら起こすだろ?」
苦笑いをしながら淡河は言う。だけど最後のは誤魔化しだ。だけど、たしかに何か隠している気がする。
(けど、そんなこと詮索するほどの仲じゃない、か。)
私の中での淡河の立ち位置が、無口なクラスメイトから少し動いた気がした。
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