君の優しい嘘と僕の哀しい嘘
これは僕の話ーー

4月1日、桜が満開の時期に君に会ったね。
僕は、春から高校生になるんだと胸がワクワクしてたんだ。僕は、新品な制服に急いで着替えて前日にピカピカにしておいた自転車にパンを咥えたまま乗ったんだ。
漫画の一部みたいかもね。僕は笑う。
急がないと寝坊した僕が折角の入学式や開会式に間に合わないからね。
そんな時、僕は君に出逢ったんだよ?
驚くことに急いでた僕に余裕そうな君は言ったよね?
「気を付けないと危ないよ?」
って、それもとびっきりの笑顔で…
あの時の僕は君はただの”お人好しなんだ”と思ってたんだよ?だって、初めて会った僕に声なんてかけないだろ?普通は。
もし逆の立場なら君にはとてもかけられないよ?平気で話せる気がしないからね。
あれから僕は君と話す機会が無いかとタイミングを見計らって居たんだ。でも同じ1年だった君は、周りの人に囲まれてて僕は声がかけられなかったんだ。

だからあの時の僕は、きっと君と今こうして一緒に居られるだなんて思っても居なかっただろうね?
君もそう思うかい?
僕は毎日君に会うたびに緊張してたからね。
笑っちゃうよね。でも君は、僕の告白を受け入れて僕の大切な人になってくれた。
あの時僕は嬉しくて涙が溢れそうになったんだよ、君は気づいてたのかな?今はもう分からないよね…

だけど、僕は。昔の僕とは違う意味で君に
”なんて、声をかけて良いのか?”
分からなかったんだ。だから、僕は君の笑顔が見たくて、心に刻み込んでおきたくて。
ーー毎日嘘をついた。たわいのない嘘を
「今日は、すごく天気が良いよ!!」
初めはそんな嘘。ほんとは天気なんか、すっごく悪かった…
次からは君が驚くような嘘を
「僕は、ツチノコを見た事があるんだよ。本当にすごいんだ!」
「今の僕は、君の為に美味しいお菓子を作る為に研究をしているんだよ」
「僕は料理が得意になったんだよ」
どれもが嘘だった。
あれから僕は、小さなたわいのない嘘を重ねてきた。
そうして毎日君に会い嘘をついた。
どれだけ長い年月を君と共に過ごして来たのだろう…
そして、君は僕に昔の…
あの時のやっぱり綺麗な笑顔で言うんだね…

”さよなら”って

続く
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