墜落的トキシック
「さっさと呼べよ。 そんなんも出来ないの? 花乃」
さらっと呼ばれた名前に、くらりと目眩がした。
全然理解できない。
佐和くんはやることなすこといつも私の理解の範疇を超えていて────掴めない。
「ゆうり……くん」
観念して、ゆっくり名前を口にする。
おまけみたいに『くん』と付け足した私に、佐和くんは。
わらった。
笑ったんだ、屈託なく。
嫌味じゃない方の笑顔だ。
鼻のところにちょっと皺が寄るのは、癖なんだと思う。
でも。
どうして、今このタイミングでそんないい笑顔するの。
「さ────侑吏くんって、私のこと何だと思ってるの?」
侑吏くんの考えていることはよくわからない。
だからあえて聞いてみることにした。
「純情で強情。面倒くさい馬鹿女」
「……」
「……ただ、俺に微塵も興味なさそうなところは面白いかもね。好奇心?」
なんだそれ。
なんだ、それ。
面白い? 好奇心……?
なんだかそれって玩具扱いされているみたいで、複雑だ。
「逆におまえはどうなの」
「え?」
まさか、質問返しされるとは思っていなくて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「花乃は俺のことなんだと思ってるの」