墜落的トキシック
「何かあった?」
こてん、と首を傾げた麻美に首を横に振る。
「……梅雨の時期、苦手なの」
はあ、と力なくため息を落とした。
そんな私の様子に、麻美は窓の外に視線をやって。
「頭痛もち?」
「そういうわけじゃ、ないんだけど……」
言葉を濁した私に、麻美は「そっか」とそれだけの相槌を打った。
それ以上詮索されることはなくて。
……私はまだ、彼女のことをよく知らない。
だから、麻美が察しがいいのか、はたまたたまたまなのか────わからない、けれど。
麻美のそういうところに救われている。
「ていうか、」
私の方に視線を戻しながら、麻美が話題を変える。
「最近のあんたら、ずいぶん仲良さそうね」
「……?」
“あんたら”が指しているのが誰と誰のことかがぴんと来なくて。
ぱちぱちと瞬きを繰り返す、と。
「花乃と佐和くん」
「っ、はあ!? なんっ、な……!?」
最早言葉にならない悲鳴を上げながら、がばっと顔を上げた。
動揺のあまり、憂鬱だった気持ちがどこかへ吹き飛んでいく。
「具体的にどのあたりがっ?」
全く思い当たる節がない。
噛みつくように前のめりになった私を、麻美はどうどう、と軽くいなす。
まるで私が猛獣かなにかのような扱われようだ。
「見たまんまでしょ。最近よく一緒にいるし、なーんか花乃も前より嫌がってない感じだし?」
「嫌がってるよ!」
「本当に?」
「ほんとに決まってるじゃんっ! 大体、私と侑吏くんが最近一緒にいるのは委員会の仕事があるからで! 仕方なく……!」
仕方なく、だよ。
それしかありえない。