墜落的トキシック



「てか、気になってたんだけど」

「何?」

「いつの間に下の名前呼び?」




にやにや、と楽しげに口角を上げる麻美。




「こっ、れは……違う!」

「えー? 違うって何がよー?」




意地悪く笑う麻美を軽く睨む。

そんなんじゃないんだってば。



侑吏くんが呼べって言うから、仕方なく呼んでいるだけ。
そして向こうが勝手に『花乃』って呼んできただけ。



そこには麻美が期待しているような “なにか” はない。

それに、侑吏くんと名前で呼び合っているのは私だけじゃない。

ほら、例えば北村さんだって────。



そこまで考えたところで、はたと思い出す。



……あれ?

そういえば、北村さんのことを下の名前で呼び始めたのは強要されて仕方なくだって嫌そうにしてた、ような。


でも、侑吏くん、私の名前は勝手に────。





どくん、とやけに大きく響いた心臓の音で我に返る。


そうだよ。

……勝手に呼ばれたからって、だから何だっていうの。




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