墜落的トキシック
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来たる昼休み。


「ちょっと! 侑吏くんもちゃんと手、動かしてよっ」

「あ?……無理。ハサミ持ってない」


空き教室で侑吏くんとふたり。
委員の仕事のために集まっているのに、さっきから作業をしているのは私ばかりだ。


侑吏くんはというと、呑気にお弁当の唐揚げをつまんでいる。



「もう一本持ってるから、手伝って!」



はい、とハサミを手渡すとそれをまじまじと見つめた侑吏くんは、はあ、と息をついた。



「俺、左利き」

「……あ。そっか」


忘れていたけれど、侑吏くんの利き手は左だった。
それじゃ、私のハサミは使えない。


仕方ないなあ。



「じゃあ、こっちのプリント書いてよ」



代わりにぴらっとプリントを差し出すと、侑吏くんはうざったそうにしながらも引き受けてくれた。



「はいはい。わかったよ」



面倒そうにしているけれど、侑吏くんも実行委員の一員なのだ。
決して私の助っ人ではなく、正規メンバーである。

これくらいしてくれなきゃ、困る。



渋々箸をシャーペンに持ち替えた侑吏くんを横目に、ちょきちょきと紙を地道に切り進めていく。



ちなみに、何故こんな地味な作業をさせられているかというと、ニッセンがありとあらゆる資料をまとめて大きな紙に印刷するという横着をしたからだ。



その結果、こうやって全てを切り離す作業をするというひと手間が加わった。



……侑吏くんもだけど、ニッセンも大概私の疫病神である。




「はあ……」




思わず吐いたため息に、侑吏くんは敏感に反応して。




「でかいため息やめてくれない?空気が不味くなる」


「まず……っ!? それはこっちの台詞!」


「なんでだよ」


「侑吏くんといると私の空気は不味くなるのっ」




いーっ、と口をへの字にした私を侑吏くんは馬鹿にしたように鼻で笑った。


このヤロウ、と頭の中で侑吏くんをサンドバッグにする。



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