墜落的トキシック



空き教室、空き教室っと……。



教室からはまあまあ距離がある。
足早に廊下を歩きながら、心の中では侑吏くんにぶつぶつと文句を唱える。



予算のことでちょーっと聞きたいことがあっただけなのに。
わざわざ探しに行かなきゃいけないなんて。



ていうか、何の用があって空き教室なんか────……




「……」



そうこう考えているうちに、空き教室が並ぶ校舎の一角に到着。

どの教室だろう、と一瞬逡巡したもののすぐにわかった。



明らかにひとつの教室から人の気配を感じたから。

昼休み、侑吏くんと使った部屋だ。





扉に手をかけて、ためらうことなく開こうとして─────




「……んぅ、ぁ……っ」




中から漏れ聞こえた声に、手が止まった。

甘い、嬌声。




「ゃ……っ、あ」



知らない声。
だけど、女の子のものだってことは確実。



その甘い声がどういうものか─────
どういう“コト”をしているときのものなのか、私でもさすがにわかる。



はあ、とため息が零れた。



聞こえてくる声が誰のものなのかはわからないのに、彼女にそういう声を上げさせている、その“相手”が誰なのかは容易にわかってしまう。


というか、この状況下で答えなんてひとつしかない。




「も、ぅ……っ、ゆう、り……ぃっ」





ちょうどタイミングよく聞こえてきた声によって、答え合わせまで出来てしまった。

やっぱり、侑吏くん、なんだ。





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