墜落的トキシック

縋る人






「うわ、花乃すごーっ」

「ちょっ、覗くの禁止!」



前の席に座る麻美が振り向いて私の手元を覗き込んでくるから、慌てて制止した。

そんな私になどお構いなしで、麻美はによによと含み笑いを浮かべている。



「佐和くんってやっぱ凄いんだねえ」

「……なんで侑吏くんを褒めるの」

「えー? だって、佐和くんのおかげでしょうに」



それ、と麻美が指差したのは、つい先ほど返却されたばかりの私のテスト。


苦手科目であり、補習にリーチがかかっていた古典と現代文。
なんと今回はどちらも平均点超えである。


いつもは良くても赤点すれすれなのだから、私にしてはかなりの上出来。
夏休みの補習もこれにて無事に回避だ。



そしてそれは、麻美の言う通り半分くらいは……いや、半分以上、侑吏くんのおかげ、なんだけど。

認めるのは癪だし、私が頑張ったことには変わりないし、と唇をとがらせる。



「それにしても、佐和くんって相変わらず凄い人気だよね」


「あー……」



麻美の言葉に曖昧に頷きつつ、きゃあきゃあと騒がしい教室の片隅に視線をやった。



人だかり。もちろんその真ん中は侑吏くんで、周りはほとんど女の子。
……というか、女の子しかいないかも。




「侑吏くんなんて顔だけだよ」

「またまたあ。まあ、その顔が極上だもんねえ。人気が出るのも自然の摂理っていうか」





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