墜落的トキシック
「あっそ、別にどうでもいいけど」
侑吏くんが吐き捨てるみたいにそう言って。
少し沈黙が流れたあと。
「とりあえず保健室行くか」
「え、」
「足そのままにしとけねーだろ。それにまだ体調も」
決定事項のように言う侑吏くん。
慌てて彼の袖を引いて首を横に振った。
「や、やだ」
「何がだよ」
「保健室はイヤ」
「は?何で」
目を細めた侑吏くん。
私はもう一度首を横に振った。
「……じゃあ病院?」
「それはもっとやだ!」
「何でだよ」
「別に大丈夫だもん。怪我もそんなにひどくないし、体調はそのうち回復するし」
必死の形相で訴える私に、最終的には侑吏くんもわかったよ、と頷いてくれた。
全然納得していない表情で、だったけれど。
そんな侑吏くんは首元におもむろに手をやって。
ネクタイの結び目に指を引っ掛けたかと思えば、しゅるり、とそれを引き抜いた。
「……何するの」
「応急処置」
そう答えた侑吏くんは私の足元にしゃがみ込んで、くるくると器用な手つきでネクタイを怪我をした方の足首に巻きつけていく。包帯を巻くのと同じ要領。
最後にきゅ、と固く結んで侑吏くんは立ち上がった。
「帰るか」
「えっと……ハルが」
待ってる、そう言いかけた私を侑吏くんが制する。
「あいつには今日は俺と帰るって言った」
「え、いつ?」
「スポドリ買いに行ったときに会った」