墜落的トキシック


そうなんだ。
侑吏くんとハルが話しているところってあまりイメージできないな。



「あ、荷物取りに行かなきゃ」



まだ教室の鍵は開いているだろうか、と思ったけれど。



「おまえの荷物は仁科が持って帰ってる」

「そうなのっ?」



ほんと私ってハルに甘やかされているな。
心の中でありがとう、と告げた瞬間。



「っ!」



前触れもなく侑吏くんが私の体を持ち上げた。


肩と膝の裏に差し入れられた腕。独特の浮遊感。

いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
慣れない感覚にそわそわして、その直後猛烈な恥ずかしさが襲ってくる。


そんな私とはうらはらに、侑吏くんは涼しげな顔で歩き始めた。



「っ、このまま帰るの?」

「あ? 文句あんのか」


文句は、ない。
けれど。



「……重いでしょ」

「すげー重い」

「……」



しれっと答えた侑吏くんにむっとする。

だけど運んでもらっている立場だから、何も言えない。
それに、重いのは事実だ。



「嘘。重くはねーよ、全然」



ふっと口角を上げた侑吏くんのその笑顔が、柔らかくて優しい。

お姫様抱っこされている状態だと侑吏くんの顔がよく見えて、余計にどきりと心臓が騒いだ。この状態、家まで続くの?



「やっぱりお姫様抱っこはやだ!」




恥ずかしさに耐えきれなくなって声を上げると、侑吏くんは思いっきり顔をしかめた。




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