墜落的トキシック
「今更何だよ。俵担ぎにすんぞ」
「それもやだ!」
「とんだワガママだな、おまえ」
「我儘じゃないし!」
いーっ、としてみせると、侑吏くんは長く息を吐き出して。
「……ほんっとワガママ女」
とん、とお姫様抱っこから解放されて、今度は背中に背負われる。
おんぶされてみると、侑吏くんの背中ってこんなに広かったんだ、と気づいた。
がっしりしていて、安心感があるのに妙に落ち着かない。
間違っても振り落とされたりしないように、侑吏くんのシャツにしがみついた。
そういえば、とふとあることを思い出す。
「……ごめんね」
ぽつり、と呟く。
「何だよ急に」
「……夏祭りの日、急に帰ってごめんなさい」
「おまえが素直に謝ると、結構気持ち悪いね」
すごい憎まれ口。
でも今回悪いのは全面的に私だし、甘んじて受け止める。
だけど侑吏くんは。
「いーよ、別に気にしてない」
「……でも」
「そもそも、急に連れ出したのは俺の方だし」
それに。
「こっちは、おまえがそういう超面倒くさい女だってことくらい、もうとっくにわかってる」
「……超面倒くさいって」
「事実だろ」
いつもなら苛立ちが勝つのに、弱っているからかな。じわじわと温かいものが胸の中を満たしていく。
……侑吏くんって。
売り言葉に買い言葉、口を開けば暴言のオンパレード。
だけど、本当はずっと、優しいよね。
認めたくないから、気づかないふりをしていたけれど、ちゃんと……ちゃんと、わかってるよ、私だって。
「ありがとう」