墜落的トキシック
「あ、そこの角を右」
もちろんのこと、侑吏くんは私の家の場所を知らない。だから、この帰り道、逐一後ろから指示を出していた。
これが最後の曲がり角。
「えーっと、この筋の真ん中辺りの家だよ」
正確に何番目かは怪しくて、ざっくりとした説明になる。
そんな私の指示に従って侑吏くんはずんずん前進して。
止まる。
「ここか?」
首を傾げた侑吏くん。
目の前には緑の屋根の大きな一軒家。
「あ、それはハルの家。私の家はこっち」
向かいにある自分の家を指差すと、侑吏くんは目を細めた。
「……近いな」
「え?」
「……。仁科の家でかいなって」
たしかにそう。
ハルの家は、豪邸とまではいかないけれど、それでもかなり大きい。
「広いよね。住んでるのはハル一人なのに」
ハルの家は、彼の部屋以外温度がしない。
気づいた時から、ずっとそうだ。
「は?……仁科、一人暮らしなわけ?」
「うん」
頷くと、侑吏くんは目を見開いて、もう一度ハルの家を振り返った。
そして、少し眉をひそめる。