墜落的トキシック
▼ Ⅲ ▼ 紆曲的トライアングル
焦がれる人
◆
「暑すぎて溶けそう……」
8月。
夏休みも終盤。
ぐでーん、と机にへたり込んだ私を侑吏くんが冷ややかに見つめている。
「手動かさなきゃ終わんねーぞ」
「わかってるってば!」
むくり、と上体を起こすと目の前にはたくさんの書類。
はあ、とため息が自然と零れた。
休暇中だというのに、わざわざ学校に来る羽目になっているのは、毎度ながら修学旅行実行委員の仕事が溜まっているからだ。
夏休みに入ってから、こうして何回か侑吏くんと学校に来て作業している。
でも、今日頑張れば、夏休みの分は終わりだよ。
夏休みももうすぐ終わりだもんね。そうすれば、二学期が始まって。
「修学旅行、楽しみだね」
秋にはもう修学旅行が迫っている。
正直、ハルとクラスが離れた時点で修学旅行になんて思い入れはなかった。
だけど、今は違う。
麻美という友達もできたし、それに。
何だかんだ、侑吏くんと頑張って準備してきたんだもの。
「おまえはどーせ食い意地だろ」
は、と馬鹿にしたように鼻で笑う。
食い意地って……。
う、否定できないのが悔しい。
ちなみに修学旅行の行き先は関西。
とりわけ京都での自由行動が目玉だ。
「やっぱり八ツ橋かなあ、うーん抹茶パフェも外せないよね。でも一番は」
「抹茶プリン」
私が口にする前に、侑吏くんが言葉尻を奪った。
思わず目を丸くする。だって。
「エスパー?」
「……なわけあるか」
ばっちり大正解だったのだもの。
心を読む力でも習得したのかと思った。
だって、ついこの前までは侑吏くんが思う私の考えていることなんて、かすりもしなかったのに。