墜落的トキシック
噛みつく人
◆
「なあんか、変わったよねー」
頬杖をつきながら、何の脈絡もなく呟いたのは麻美。
夏休みは瞬く間に明け、既に新学期が始まって二週間が過ぎようとしている。
そんな、とある昼休みのことだ。
「変わった……?」
何のことかわからず、きょとんと首を傾げると、麻美は教室のある一点に視線を送る。
「佐和くんよ」
「侑吏くん?……え、どの辺りが?」
麻美にならって、私も侑吏くんを見るけれど。
もぐもぐと唐揚げを頬張っている侑吏くんに、別段変わった様子はない。
夏休みを通して日に焼けたわけでも、髪型が変わったわけでもないし……きっと、髪の下に隠れている右耳のピアスも、だ。
「いつも通りじゃない?」
一通り侑吏くんをチェックし終えて、そう結論づけた私を麻美は「ばか」と小突いた。
結構痛いんだよ。容赦ないから。
「外見じゃないわよ。行動の話」
「行動?」
「二学期に入ってから、授業さぼらなくなったよね」
たしかに、そう言われてみれば。
侑吏くんといえば、最低でも2日に1回、多い日では1日に2回さぼるのがデフォルトのサボり魔だ。
だけど最近の侑吏くんは麻美の言う通りフル参加。
さぼっているのを見かけなくなった。
「それに、あれ以来めっきり女の相手しなくなったみたいだし」