墜落的トキシック
手首にちくりと走った痛みに思わず抱えていたケーキの箱を床に落としてしまう。
「……あ、ごめ……」
慌てて謝るも、ハルはさほど気にしていない様子で。
今度はぐっと距離を詰めて、鎖骨にも同じことを繰り返した。
身をよじっても離してはくれなくて。
だけど、きっと、本気で抗えば逃げられるほどの拘束だった。
でも逃げられない。私には無理だ。
それはきっとハルもわかっている。
鎖骨に与えられた痛みに、思わず顔を歪める。なぜか胸の奥もつきん、と痛んで、涙目になった。
そして、仕上げだと言わんばかりに首筋に唇を寄せたハルは薄く口を開いて。
「……ごめん」
そっと小さく呟かれたその謝罪の台詞が、その直後首筋にちくりと走った痛みに対してなのか、それともそこに紅く散った花に対してなのかはわからなかった。
────「一生、俺だけのものだったらいいのに」
解放される寸前、ハルがふいに零した言葉がはっきりと耳に届いて、それだけが私の心を柔く縛りつけたのだった。