墜落的トキシック
「赤くなってる。ずいぶんと派手にやられてんねー」
その言葉に、首元を確認した。
いや、しようと、した。
その私の動作を遮ったのは。
────ガタンッ
机と椅子が大きく揺れた音。
誰かが勢いよく立ち上がった音だ。
思わず音がした方を振り向けば、その人影はつかつかとこちらに歩み寄ってくる。
そのよどみない足取りに呆気にとられていると。
「花乃」
「っ? 侑吏くん?」
呼ばれた名前。
何の用だろうか、と身構える。
侑吏くんはそんな私の首筋、鎖骨、それから左手首を目だけでつう、と辿って。
チッ、と小さく舌打ちを零した。
それがやけに鮮明に耳に届いて、体をこわばらせる。
すると。
「来い」
短くそう告げて、侑吏くんは私の腕を強引に掴んだ。
ずるずると引きずられるような形で廊下に連れ出される。
それでも侑吏くんの足は止まらなくて、ずんずんとどこかに向かっていく。
「ちょっと侑吏くん! もうすぐホームルーム始まっちゃう……っ」
「んなこと、どーでもいいんだよ」
「よくない!」
HRをサボったら、またニッセンに目をつけられるんだから。
これ以上、厄介事を被るのはごめんなの。
「もうおまえは黙れ」
「はあ!? 元はというと侑吏くんが────」
「いい加減、その口塞いでやろーか」
階段の踊り場。
急に立ち止まって、睨むようにこっちを向いた。
表情にも声にも、苛立ちを含んでいる。
全身にぴりぴりとした空気をまとっていて、思わず体がすくんだ。