墜落的トキシック
「なんでそんなに私に構うのっ?放っといてくれればいいじゃん!」
気に食わないなら、そっとしておいてよ。
どうせ、分かり合えないのに。
だって、私と侑吏くんは、最初から全然違う。価値観なんてかすりもしなかった。
なのに、なんで。
わかりたい、なんて言うの。
鋭く睨みつけると。
「なんで?……んなの、」
短く息を吸う。
その音が鮮明に聞こえる距離。
侑吏くんが私をまっすぐ見つめるその瞳には抗いようのない熱がこもっていた。
「好きだからだろ! おまえのことが好きなんだよ!」
息を呑んだ。
ひゅっ、と喉が音を立てる。
「え、」
「……」
何を言われたの、今。
好き……?
誰が、何を。
────侑吏くんが、私、を?
「どういう、意味……っ?」
「そのまんまだよ」
「え……、え?」
目を白黒させて、口をぱくぱくする。
思考回路が完全にショートした私に、侑吏くんは追いうちをかけた。
「好きだっつってんだよ」
「……っ!」
どくん、と心臓が跳ねた。
ど真ん中ストレート。
聞こえないふりも、わからないふりも、許されない。
「……」
だからってとっさに出てくる言葉はなかった。
だって、誰が予想できる?こんな状況。
フリーズする私を、一瞥して。
侑吏くんは困ったように笑って。
「……頭冷やしてくる」
熱の余韻だけを残して、くるりと背中を向けた。
保健室の扉が閉まる音、侑吏くんが出て行ったんだとわかって。
ベッドの上に残された私の頬に、目のふちに残っていた涙の雫が一滴ぽたりと落ちた。