墜落的トキシック
▼ Ⅳ ▼ 希望的チェックメイト
想う人
◆
……気まずい。
ほんとうに気まずい。
わいわいがやがや、楽しそうに弾む話し声が前後左右の座席から聞こえてくるというのに、私だけまるで、異空間にいるようだ。
いや、私だけじゃない。
きっと隣に座る、侑吏くんも、だ。
こんなはずじゃなかったのになあ、と心の中で呟いた。
無意識に眉がぎゅっと寄る。
────待ちに待った修学旅行が幕開けた。
初日の今日は、これから京都での班別自主研修が待っている。
そして現在、バスで京都市内に向かっている道中なのだ。
「……」
車内のクラスメイト達のテンションの高さに比べて、私たちは終始無言である。
よりによって、このタイミングで侑吏くんの隣。
この座席を決めたのは誰────って、私と侑吏くん、か。
バスの座席を決めたのは随分前のことだ。
そのとき、実行委員は便宜上隣の席の方がいいよねってことになったんだっけ。
準備段階だけでなく、実際の修学旅行中にも人数確認など、なにかと仕事があるから。
ただし、今、猛烈に後悔している。
でも、座席を決めたあのときは、まさかこんなに気まずいことになるとは思っていなかったもの。
『おまえのことが好きなんだよ』
未だに何かの冗談なんじゃないかと思う。