墜落的トキシック
「俺は、花乃を手に入れたかったけれど。……それ以上に、死ぬほど大事なんだよ。自分よりも、全然。何よりも、一番」
「……っ」
「解放しないとって思った。このまま花乃のそばにい続けたら、いつか花乃のことを壊すと思った。……誰よりも愛しいから、大切だから、離れる覚悟を決めた」
だから、別れよう、って切り出したんだよ。
「だけど全然駄目だったな。手放してから、めちゃくちゃ後悔した。何がなんでも傍に置いとくんだったって思った。嫉妬なんて生ぬるいもんじゃなかった」
しんどいんだよ。本当に。
ぽつり、と呟いて。
「どう? 幻滅した?」
気を取り直したように首を傾げるハルに思いっきり首を横に振る。
そんな私にハルは、ふわりと微笑んで。
「あーあ、花乃に嫌いって言われたらさすがに諦められるのに」
「それは、絶対に無理……っ」
「ふ、嬉しいから困るね」
嫌いに、とか幻滅、とか。
絶対無理だ。
ハルの思惑がなんであれ、あのときの私が救われたのは事実なの。
────きっと、ハルがいなきゃ、私は今、ここにいないの。